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野田地図 第14回公演「パイパー」 [演劇・芸術]

@シアターコクーン、公演時間は約2時間5分。チケット代は9500円

 1000年後の火星が舞台。900年前に地球から移住してきた人間の子孫が、食料もなくなりつつあり、なおかつ「パイパー」という謎の物体に襲われつつも、辛くも生き残っている。そもそも希望を持って火星に移住してきたのに、なぜこんな事になったのか。死者に埋め込まれていた記録装置“おはじき”で過去を振り返りながら、その真相を探っていく。

 パイパーは、人々の幸福度を指し示すパイパー値の上昇のため、手助けするためのロボット?。従って、移住当初は人の手助けをするし、人に危害を加えることなどはなかった。ではなぜ、人を襲うようになったのか。それはやはり人側に原因があった。

 パイパー自体が何者かは別として、個人的には「ロボット三原則」を思い出しながら観劇していた。要するに「人に危害を加えてはならない」「人の命令には服従する」「前2項に反しない限り、自己をまもらなければならない」というもの。

 すでに観劇から1カ月ほど経ち記憶も朧気になりつつあるけれど、「人の命令には服従する」という部分に強くパイパーが反応したように思える。それは900年もそうだし、1000年後の火星人類が危機に瀕する数十年前も。特に後者では、パイパーが自らの過ちを質され、すべてを無に帰そうと行動をはじめるのであるけれど。そうした点では、パイパー自身に悪意はなく、ただただ行動の補正に努めているだけなのかもしれない。

 一方の人間側では、自己が生きるためのエゴが見え隠れする。そこに食料があるのはなぜか、どこで調達しているのか云々。絶望の淵にたった中でも、本作では希望を感じさせるシーンが幾つかあった。個人的に再演作を除けば、「The Diver」など近作は絶望を感じる作品が続いていたので、なにか一筋の光が非常に強く感じられた。

 宮沢りえ、松たか子、橋爪功、大蔵孝二と、非常に強力なメインキャスト陣であって、シリアスから笑わせてくれるシーンまでと実に多種多彩だった。宮沢りえの声が少しかすれていたけど、以前の舞台でも似たような声質だったので、実はかすれから来るものではないかもしれない。

 終盤、宮沢りえと松たか子が手をつなぎ、幾つかのフレーズを繰り返すのだが、どうも他の方の感想を読んでいると、それは池袋の東京芸術劇場にたどり着くらしい。会場で戯曲を掲載した月刊新潮を買わなかったのを今になって後悔しつつある日々。素直にWOWOWでの放送を待った方が良いのだろうか。

 次回公演は、芸術監督に就任する東京芸術劇場で、2009年8月~9月に「ザ・ダイバー日本語バージョン」。野田氏のほか、大竹しのぶ、渡辺いっけい、北村有起哉が出演。

http://www.nodamap.com/en/piper/
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