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虚構の劇団 旗揚げ公演「グローブ・ジャングル」 [演劇・芸術]

@シアターグリーン BIG TREE THEATER。公演時間は約1時間50分。

 鴻上尚史氏が新たに立ち上げた劇団の旗揚げ公演。第三舞台もKOKAMI@networkも残念ながら観ておらず、鴻上氏といえばタモリ倶楽部に知的なような馬鹿げたような回に出てくる人、というイメージが強かったわけで(苦笑

 開始早々、ストーリーの本質に迫る要素が散りばめられており、かつ、そこを触れながら書かないと個人的に記録となしえないのでTOKYO MX「東京舞台通信」のYouTube動画を挟んで以下に。



 3年前の夏のコミックマーケット。そこに出店したフランチャイズ店の女性アルバイトスタッフがその状況を自分が感じたままブログに書いたことで“炎上”。舞台冒頭では、その他のシーンを含めながら、絡み合って明確になっていき、最初に“火を付けた”劇団を主宰する登場人物と、女性アルバイトが登場人物として、まず浮かび上がっていく。

 この件自体は、すでに3年前の出来事で「ちょっと古いかな。最近だと“テラ豚丼”もあったな」と思いながら観ていたが、舞台上で示されたようにそれでも当事者にとってみれば変わらぬ記憶として残る。さらに今も「コミケ、バイト」と検索すれば関連するWebサイトが検索結果として表示されてしまうわけで、事実としてネットにひたすら残り続けてしまうのは間違いない。

 登場人物にはそれ以外にも、「ブログは残るが、すでに世にいない」人物や「AV女優としての過去を断ち切ろうとする」人物、「携わっていた公園遊具の仕事がなくなった」人物、「インターネットに拠り所を探す14歳」、「ネットの安全を守るという“正義”のもと、ネットの“祭”が好きな」人物などが登場しており、非常に今時な事柄をベースとした登場人物が多い。

 ただ、彼彼女らが舞台で主に登場するのは、日本ではなくロンドン。これは劇場配布の鴻上氏直筆による「ごあいさつ」にあったように、氏が2年前に訪れたロンドンやゲストハウスなどの実体験が含まれているのだろう。こうした出来事や登場人物達を一旦ロンドンに飛ばしてしまうのは、ある意味で俯瞰的な要素が加わったのかなとも思うし、海外に行くという各人物達の決断という感情や同胞感という部分もあるのではないかと感じた。

 ともすれば、こうしたネットが話題のドラマや芝居は暗部を切り出して終わるか、無理矢理恋愛に繋げてしまいかねるケースもなくはない。けれども本作では暗部は暗部として、しかし、ネットによって一歩を踏み出せる可能性をも示しているのではないかと思う。「ブログは残るが、すでに世にいない」人物は、「自殺の思いがある」人物には見える仕掛けになっていて、終盤にかけて彼以外の登場人物の心情変化を現わしてくれたように思う。

 旗揚げ公演かつ平均年齢21.7歳という9人の出演者達の演技力は個々様々。ダンスシーンも一部は基本ステップ(マンボとか簡単な切り返し)だったりと、決して上質なレベルに達していないところもある。ただ、公演案内やパンフレット、劇団サイトでの鴻上氏の発言、それに舞台の彼・彼女たち通じて感じさせてくれる彼の思いというのが実に心地良い。それは、新しいものに食らいついていき、なおかつ楽しんでいる点で、いくつかの不満点をカバーしきって余りあるようなものだと感じた。

 何より、50歳前後の氏がインターネットに纏わる話題の表裏を踏まえて舞台を作り上げている点は、現状に甘んじて、新しいことに蓋をしてしまいそうになる自分の考えを改めさせてくれる。やはり、たまにはコレだというものに食らいついていく姿勢を出していかないといけないな、と。

 公演自体は他の劇団チラシに混ざっていたチラシで知りましたが、劇団自体の存在は元マイクロソフト社長で現慶應義塾大学教授の古川享氏のブログから。氏のブログにある「何かをやりたくなった」という姿勢は、本公演を見終わって感じた感想の1つと同じであり、観劇して良かったなと素直に思っています。

古川 享 ブログ: 鴻上尚史さんの「虚構の劇団」旗揚げ準備公演を観る

 第2回公演は2008年9月の舞台版ドラえもんの脚本・演出を経て、2008年12月には紀伊国屋ホールで。非常に楽しみではありますが、紀伊國屋ホールは座席の座り心地、傾斜等々が良いとは言えない環境なので、舞台それ自体とは関係のない部分でフラストレーションがたまらないかが唯一の不安。

http://www.thirdstage.com/k/




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