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現代能楽集シリーズ第4弾「THE DIVER」 [演劇・芸術]

@シアタートラム

 主催は世田谷パブリックシアター、作・演出・出演は野田秀樹。公演時間は1時間20分ほど。

 2007年の「THE BEE」ロンドンバージョンに続く、野田氏による英語劇。キャサリン・ハンターら3名が共演。筒井康隆「毟りあい」が原案となった「THE BEE」と比べ、本作では能楽「海人」や「源氏物語」、それに現代に起きた事件が組み合わさっており、事前知識のない私は冒頭から中盤にかけてそれぞれを理解していくのに時間をかけてしまった。

 今回は日本語バージョンは連続上演されなかったものの、英国側スタッフの手による舞台美術は日本版と比べて点数が多い印象。また、本の表紙を使って能面、センスを使ったピザや電話の表現、それに布などによる妊娠状況の表現手法は相変わらず素晴らしく、それに加え、ソファの回転による舞台上にいる人物の切り替えなども自然に受け入れられた。

 野田氏が演じた主たる役柄は精神科医だが、終演後、じわじわと印象が強まってくるのは源氏の妻役・葵の上の役柄。このときにキャサリン・ハンターが演じている六条は、不倫相手の源氏との間に2回目の妊娠(1回目は堕胎)をしており、源氏に対して堕胎することを電話で告げるものの、その電話に出たのは葵の上だった。

 その葵の上は、センスを模した携帯電話で執拗に六条に電話をかけ直し続け、六条こと被疑者のユミが2幼児を殺害するのを決意させる言葉を葵の上が発する。それは日本語で発せられ、決して大きな声ではなかったものの、観客席が一気に沈黙したような印象を感じさせた。

 この電話のかけ直すシーンは十数回続き、葵の上が電話をかける→六条が電話に出て切る、の繰り返し行為から来る滑稽さに私は何度か笑ってしまった。しかし、その後に自宅に帰り、今回取り上げられた事件(Wikipedia-日野OL不倫放火殺人事件)の内容をWebで読むに、果たしてそこで笑った自分は何なのかという思いに駆られる。それは繰り返しの架空行為に対する笑いだったはずだが、それが実際の事柄であると捉え直すと、その場で笑った自分は何だったのだろうかと。

 舞台では2幼児殺害の罪で死刑か否かを捉えられたが、加害者であるユミは「4人殺した」と言う。野田演ずる精神科医役は彼女の精神状態に対する分析結果を出しつつも、苦悩に見舞われる。上記の物語や事件に加え、死刑制度も盛り込まれており、新聞などの書評にあるように1つの答えではないため、振り返りながら考えされる点が異なってくる。

 日本語字幕の表示器が2本ついてましたが、演出の判断からか反復のところでは表示がされないところも。また、台詞によってはフォントや消え方が変わっていたりと、単に表示するのではなく、演出が加わっていた様子。ただ、シーンによっては両翼手前側の人は字幕が見えにくかったのかなとも配置的に思いました。

http://setagaya-pt.jp/theater_info/2008/09/the_diver.html




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